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100年以上続く「藤枝朝ラー」発祥の店 「マルナカ」が伝える歴史と伝統の味

明治時代から続く藤枝の老舗「マルナカ」は、地域の食文化「藤枝朝ラー」発祥の店として知られています。
3代目店主が語る創業秘話や冷やし中華そばの誕生秘話、代々受け継がれる伝統の味と家族の思いを通して、単なるラーメン店以上の深い歴史と魅力に迫ります。 

目次

お客様の一言から生まれた冷やし中華そば

志太系ラーメン定番の冷やし中華そば(並)

──マルナカさんイチオシメニューの冷やし中華そばも有名ですが、その誕生秘話を教えていただけますか?

小栗さん

暑い時に冷たくして出したら、お客さんに「美味しい」て言っていただいたんです。それで、それから蕎麦屋さんのように『中華そばの冷やし』というので始めました。昔は冷蔵庫がなかったので、常温のおつゆを甘み付けて沸かして、冷ましたものに、水で洗った麺を入れて、普通に盛り付けて出していたみたいです。母が嫁いだ当時には既に冷蔵庫があったそうです。

マルナカの冷やし中華そばは、暑い夏に客の要望に応えて生まれました。
蕎麦屋の発想を取り入れ、冷たい麺とつゆの組み合わせが今日の冷やし中華そばの原型となったのです。 

「ラーメン」ではなく「中華そば」と呼ぶこだわり

──「ラーメン」ではなく「中華そば」と呼ぶこだわりについて教えてください

小栗さん

始めた時、ラーメンという言葉はなかったんです。最初は『支那そば』で始めて、その時代は『中華そば』と言われていました。それからラーメンと言われるようになって、ラーメン屋という名前に変わっていったんですけど、お品書きは『中華そば』になっています。おじいさんは死ぬまで『ラーメン』という言葉にちょっと抵抗があったんです。
 
私たちは蕎麦屋組合に入っているんですよ。一応蕎麦屋組合に入っているけど、蕎麦は扱っていません。蕎麦屋さんの組合では『蕎麦祭り』というのがあるんですが、それは日本蕎麦でやっている組合の方が多いです。

マルナカでは今も「中華そば」という呼称を大切にしています。これは創業当時の名残であり、「ラーメン」という言葉が一般的になる前からの長い歴史を物語っています。 

ボリュームたっぷりなのに食べやすい麺が人気

──マルナカさんの麺の特徴や人気の理由を教えていただけますか? 

小栗さん

昔より丼のサイズちょっと大きくなっちゃって。どんどん大きくなっちゃってる気がします。2つ食べてもらうためにはもっと少ない方がいいのかもしれないけど。

ボリュームたっぷりでありながらも「つるつるしてて、するする入っていく」と評されるマルナカの麺は、食べやすさが人気の秘密の一つです。女性のお客様も多く、思った以上にペロリと食べられるようです。

スルスルと食べられる軽い口当たり。気づいたら完食です

大正時代の屋台から始まった、3代続く中華そばの歴史

──「マルナカ」の歴史について教えていただけますか? 

小栗さん

私は3代目なんですけど、祖父が始めました。祖父は明治33年生まれで、20歳になる前には屋台を始めたと聞いています。それが1919年頃ですね。お店を持つのは昭和になって、父が2歳になる頃、多分昭和10年頃だと思います。その時にお店を持って、それから店売りを始めたと言っていました。

マルナカは100年以上の歴史を持つ老舗です。創業者である初代は20歳前から屋台を始め、その後昭和10年頃に店舗を構えました。

毎朝お客様を向かえる狸の置き物

「支那の人」から教わった中華そばの技術

──ラーメンの作り方はどのように伝授されたのですか? 

小栗さん

おじいさんは『支那の人』から教えてもらったと聞いています。私が子供の時は『信濃の人』だと思って、長野県の出身の人から教えてもらったのかなと思っていたんですよ。でも北海道テレビの方が『「支那」の人なんじゃないですか』と。その時代は大陸に日本の人が行ったり、向こうの人が来たりしていたので、もしかしたら中国の人かもしれません。おじいさんが数を数える時に、中国語で数えていたのが印象に残っています。

創業当時の技術継承には謎も残されています。初代が「支那の人」から習ったと言う「支那そば」は、中国からの影響があったのかもしれません。

「変えても構わない」と言われながら守り続ける味

中華そば(並)
あっさりとしたしょうゆ味で、朝からするする箸が進む

──味の継承についてどのようなこだわりをお持ちですか? 

小栗さん

こだわりですか…祖父は『自分の美味しいと思うのを作ればいいよ』って言ってたんです。『変えても構わないよ』って。母が継ぐ前に、祖父が両親にはそういう風に伝えていたという話は聞いています。

マルナカは現在、3代目夫婦と娘さん(4代目)の3人で運営されています。
味の継承については、代々「変えていない」という建前がありつつも、実際にはわずかな改良を加えながら進化してきたと伺いました。しかし、その本質は先代から受け継いだものを守り続けているという姿勢です。 
家族で守り続ける伝統の味は、これからも受け継がれていくことでしょう。

広がる朝ラー文化と観光資源としての価値

──近年の「藤枝朝ラー」ブームについてどのようにお感じですか? 

小栗さん

藤枝にも朝ラーを提供するお店ができたので、いろんなお店を回ってもらって、藤枝朝ラーで盛り上がってくれればいいんじゃないかなと思います。最近は県外からのお客様もお見えになりますよ。藤枝MYFCのサッカーの試合で地方から来られる方が次の日の朝食べにいらしたりとか、試合の日程によって朝こちらに来て、午後から試合会場に行くとか。

あと、オートバイ雑誌にも載せてもらったりしたことがあります。ツーリングでちょうど距離的にいいらしいですね。首都圏からバイクで来られる方もいらっしゃるので、大きなハーレーのような音を立てて来る方もたまにいらっしゃいます。

「藤枝朝ラー」は地元の食文化として定着しているだけでなく、県外からのお客様も引きつける観光資源となっています。特にサッカーファンやバイク愛好家の間では、藤枝を訪れる際の立ち寄りスポットとして人気を集めているようです。

──藤枝の朝ラー文化をさらに盛り上げていくためには、どのようなことが必要だと思いますか?

小栗さん

藤枝朝ラー文化軒究会の人たちが色々とネットで書いてくれたりして嬉しいですね。藤枝市役所の方も朝ラーを紹介するイベントをやってくれたりしています。

地元の藤枝朝ラー文化軒究会や藤枝市役所の支援もあり、「藤枝朝ラー」の認知度は着実に高まっています。マルナカの店主は謙虚に自店の宣伝よりも、藤枝全体の朝ラー文化が発展することを望んでいるようです。 

──最後に読者へのメッセージをお願いします

小栗さん

営業時間が短くてごめんなさい。
朝8時半から午後1時20分ぐらいまではやっているようにしています。

マルナカは朝8時半から午後1時20分頃まで営業しています。
100年以上の歴史を持つ「藤枝朝ラー」発祥の店で、伝統の味を是非ご賞味ください。
朝の爽やかな時間に食べる一杯は、格別の美味しさです。 

店舗情報
店名マルナカ
住所静岡県藤枝市前島1-3-1
営業時間8:30~13:20
定休日日曜日・祝日・第2・4土曜日
※臨時休業あり
看板メニュー中華そば、冷やし
駐車場
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