藤枝市が誇る「朝ラー」文化。その中で鹿児島黒豚を使った背脂ラーメンで新たな風を吹き込んでいるのが「まる泰商店」です。居酒屋経営から朝ラーの世界に飛び込んだ店主・佐野さんに、こだわりの一杯と藤枝朝ラー文化への思いを伺いました。
鹿児島黒豚が生み出す絶品の一杯

──看板メニュー背脂ラーメンのこだわりを教えてください。
佐野さん背脂は鹿児島の黒豚を使っているんです。
ベースは志太系のスープなんですが、元祖朝ラーの味を尊重しながらも、甘さは少し抑え目にしています。
まる泰商店の背脂ラーメンは一口啜ると、豚の甘みが口いっぱいに広がります。背脂ラーメンと聞くと、朝から重たいイメージがあるかもしれませんが、実際に食べてみると意外とあっさりとした後味です。
佐野さんよくある朝ラーの志太系のスープだとあっさりしすぎていて、でも普通の背脂ラーメンはこってりしすぎている。その中間を狙って、朝から『ちゃんと食べたい』という人に向けて作りました。
まる泰商店の背脂ラーメンを最大限に楽しむコツは、まずはそのままの味を楽しみ、途中から卓上の辛味噌で味変を楽しむこと。スープの旨みと背脂の甘みが絶妙に調和した一杯は、最後の一滴まで飲み干したくなる美味しさです。

──背脂ラーメンの他にも朝、食べられるおすすめのメニューはありますか?
佐野さん「とろ玉タンメン」ですね。
こちらも黒豚にこだわったメニューで、下に志太系のスープが入り、その上に玉子と鹿児島黒豚のひき肉がのっているメニューのよう。とっても美味しそうです!
佐野さん黒豚にこだわる理由は、肉の濃い味わいを感じられるからです。油もベタつかず絶妙な感じで出て、挽き肉にすると肉の味がより濃くなって、出汁も良く出ます。噛むとその旨みがじわっと広がりたまりません。
朝からがっつりラーメンを食べたい人にとって、肉の存在感があるメニューは格別の満足感を与えてくれます。しかも油はあっさりとしているので、朝食として無理なく楽しめる絶妙なバランスを実現しています。
居酒屋店主が挑んだ朝ラーの世界
現在、藤枝駅前で居酒屋「個室×もつ鍋 健美食彩 SENSU(扇子)」を経営。 そんな店主の佐野さんは、コロナ禍をきっかけに新たな挑戦を始めました。
佐野さんコロナを機に売上が落ちていくのを感じて、『もし次も同じようなことが起きたら従業員を守れないな』と思ったんです。そこで違う時間帯にも営業できるものがいいなと考えた時に、自分の好物でもある”ラーメン”が頭に浮かびました。
元々ラーメン好きだった佐野さんは、どんなラーメンにするか考えた時、地元の朝ラー文化に注目しました。
佐野さん藤枝の朝ラーって面白い文化だなと思って、志太系のラーメンをやってみようと思ったんです
夜は居酒屋、朝・昼はラーメン店という二毛作経営は体力的に大変そうですが、「まあ、なんとか(笑)」と笑顔で答える佐野さんの姿からは、新しい挑戦への情熱が伝わってきます。
鹿児島黒豚との出会いと新メニュー開発
佐野さんがまる泰商店のメニューを開発するにあたって大きな転機となったのが、鹿児島の黒豚との出会いでした。
佐野さん商工会議所に入っていて、その関係で鹿児島に行った時に肉を卸している方を紹介してもらったんです。元々は居酒屋の方で黒豚のしゃぶしゃぶをやろうと思っていたのですが、『挽き肉や背脂はありますか?』と聞いたら、『ある』と言われて。実際に食べてみたらすごく良くて。
その体験がきっかけとなり、まる泰商店の看板メニューである黒豚を使った背脂ラーメンや、とろ玉ラーメンが誕生しました。

ラーメン好きが高じてラーメン屋を開業した佐野さんは、「ラーメン屋の店主って、ラーメンが好きだから始めたという人が多いですよね」と笑います。「その分、こだわりがたくさん詰まっているんです」と笑顔で答えてくださいました。
家族でも楽しめる朝ラーの新スタイル 子連れにも優しい店舗づくり

まる泰商店の特徴の一つが、広々としたお座敷スペースです。朝ラー店でお座敷があるのは比較的珍しく、特に小さなお子さん連れの家族にとって嬉しいポイントです。
佐野さんお座敷があって、お子様用の椅子も用意していますので、家族でも気軽に来ていただけるようにしています。
朝の時間帯にラーメンを食べに来る家族連れも多く、朝ラー文化を次世代に伝えていく上でも重要な役割を果たしています。地域の食文化を支える拠点として、単にラーメンを提供するだけでなく、家族で楽しめる空間づくりにもこだわっている姿勢が伝わってきます。
「広めるべき面白い文化」としての朝ラー店を営む店主の熱い想い
──藤枝の朝ラー文化についてどう思いますか?
佐野さんすごくいい文化だと思っています。面白い文化であり、もっと広めるべき文化だと思っています。僕も本当にこの文化を広めたくてラーメンを選んだくらいです。
朝からラーメンを食べるという独特の食文化は、藤枝の誇るべき地域文化であり、佐野さんはその継承者の一人として自覚を持って取り組んでいます。朝ラー文化が地域の観光資源としても注目される中、新たな担い手が増えることで、さらに発展していくことにも期待が高まります。
──伝統を守りながら進化させる 新時代の朝ラーへの挑戦
佐野さん歴史ある朝ラー文化ですが、時代に沿って変化していくことも大事だと思っています。元祖のスタイルを私もやりつつ、新しくしていければと。昔の形も残しつつ、今の時代にも沿った形で進化させていければいいなと思っています。
伝統的な朝ラー文化を大切にしながらも、佐野さんは時代に合わせた進化も必要だと考えています。まる泰商店では伝統的な志太系の味を基本としながらも、黒豚を使った背脂ラーメンなど新しい試みを取り入れています。このバランス感覚が、長く続く食文化をさらに発展させる鍵となるのかもしれません。
地元の人々に愛され、観光客にも注目される新しいスタイルの朝ラーを、ぜひ一度体験してみてください。伝統を大切にしながらも、新しい風を吹き込むまる泰商店の一杯は、きっとあなたの朝を特別なものにしてくれるでしょう。

| 店名 | まる泰商店 |
|---|---|
| 住所 | 静岡県藤枝市青木2-9-6 |
| 営業時間 | 7:00~13:30 |
| 定休日 | 月曜日 ※不定休あり |
| 看板メニュー | 背脂ラーメン |
| 駐車場 | 有 |

